研究内容
光機能化学とは
図1 光機能科学
光機能化学とは、"光化学"、"有機化学"、"高分子科学"が協調することで初めて発現する機能に着目した複合的学問領域であり(図1)、学術的かつ実学的観点からの材料開発を目指している。
"光機能化学"を展開するためには、光化学、有機合成化学、高分子科学などの幅広い知識が要求され、これらが一体となってはじめて新しい光機能材料の扉が開かれる。
光情報の分子増幅 : "1:1対応の化学"から"カスケード式化学"へ
図2 カスケード式化学
従来の化学は、"A→B"という変化を追求する"1:1対応の化学"がメインであった。当グループでは、複数の化学反応を連結して最初の化学変化を増幅することを試みており(図2)、これを"カスケード式化学"と名付けている。特に、1段階目の反応が光化学反応であれば、光によるわずかな変化を熱化学的に増幅することが可能であり、光反応性材料の超高感度化が期待できる。
高感度フォトポリマーの開発
(1)光開始剤の開発
フォトポリマーはエレクトロニクス産業に欠くことのできない機能性高分子である。産業技術の高感度化に伴いフォトポリマーの高性能化が求められ、従来の"1光子=1化学反応"型から"1光子⇒多数の熱化学反応"型へと進化している。後者は、光化学的に酸あるいは塩基分子を発生させ、これを触媒として高分子の熱化学反応を引き起こすことを原理としている。当グループではここで用いる高効率な光開始剤の研究開発を行っている。
(2)塩基増殖反応の開発
塩基増殖反応とは、塩基触媒の作用で分解し新たに塩基分子を放出する自己触媒反応であり、 有光・市村らにより世界で初めて見出された(Angew. Chem. Int. Ed. 2000)。このような反応を起こす化合物を塩基増殖剤と呼ぶ(図3)。当グループでは様々な塩基増殖剤の研究開発を行っている。
(3)塩基増殖型フォトポリマーの開発
(1)で開発した光塩基発生剤と(2)の塩基増殖反応を組み合わせることで多種多様なフォトポリマーの創出が可能である。一例を図4に示す。この系では、光化学的に発生した塩基濃度を塩基増殖反応により2次的に増大させることができるので、飛躍的な高感度化が可能である。塩基増殖型フォトポリマーを用いた高感度マイクロ光パターニングの例を図5に示す。当グループでは、さまざまな塩基増殖型フォトポリマー(フォトレジスト、UVキュアリング材料など)の研究開発を行っている。